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空海の著作を調べていて、『文鏡秘府論』という題名に出会ったとしたら。
ぶんきょうひふろん。秘府……。どんな秘密が書かれているの? と、少し身構えてしまいそうです。
でも、この本へ入るときは、まず詩や文章を作るための手引きと捉えると、内容の見当がつきます。題名の雰囲気だけで、お経や修行の作法の本だと決めなくていいんです。
空海といえばお寺や書の名人、というところから見ていた人には、おっ、文章を作るほうの仕事もあるんだ! という入口になりますね。
中国の創作理論をまとめた本
筑摩書房の『弘法大師 空海全集 5』の紹介では、『文鏡秘府論』は詩文の創作を志す人のための手引きと説明されています。中国の六朝から唐にかけての創作理論を、体系的に編んだものです。
古い中国で積み重なってきた詩文の作り方を学ぶ本、と押さえると、題名から想像した「秘密」とは少し違って見えてきませんか。
空海が書いた詩を集めた本、という紹介ではないんですね。作品を読むことと、どう作るかを学ぶことは、棚を一つ分けて考えられます。
今のメールの書き方をそのまま教えてくれる実用書、という意味でもありません。古い中国の詩や文章について学ぶ本として、入口を合わせておきましょう。
天・地・東・南・西・北。まずは六つの巻を眺めよう
同じ出版社の目次には、天巻、地巻、東巻、南巻、西巻、北巻が並んでいます。
方角がずらっと出てくるので、ここでも何か壮大な地図を想像しそう。でも、目次の中身に目を移すと、文をどう作り、どう考えるかという項目が見えてきます。
たとえば南巻には「論文意」、西巻には「論病」という表示があります。
「論病」の病は、題名だけを見て身体の病気の説明だと受け取らず、詩文を扱う本の中の項目として見る。読めない言葉へ一気に突っ込む前に、何の分野の話かを置き直せるんです。
最初から六巻を通して理解しようとすると、なかなか大きな一歩です。まずは目次を見て、気になる項目から訳や注を探す、という入り方を私は選びます。
読む本を探すなら、全集は「第5巻」まで確認してね
現代の訳や説明と合わせて読みたい場合、候補の一つが筑摩書房『弘法大師 空海全集 第5巻 詩文篇1』です。
国立国会図書館の書誌では、『文鏡秘府論』『文筆眼心抄』を収め、興膳宏が訳注を担当する巻だと確認できます。訳注とは、訳文に語句や内容の説明を添えたものです。
『文筆眼心抄』は、出版社が『文鏡秘府論』の縮約本、つまり短くまとめた本として紹介しています。同じ題名の別表記として読み飛ばさず、収録される二つの本として見てください。
本を区別する番号のISBNは9784480770059。出版社では品切れと案内されており、楽天で確認したのは中古本の掲載です。巻数と商品の状態を確かめてから選んでね。
難しい題名を全部ほどけなくても、「詩や文章を作る理論をまとめた本」と分かれば、次に探すページは変わります。
空海の本、でひとまとめにしていた棚に、文章の作り手へ向けた一冊もある。そこから目次を開くなら、ぐっと近づきやすくなりそうです。