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空海の漢詩、つまり中国の詩の形式に沿って漢字で書かれた詩を読もうとして、手が止まったら。
今日は、同じ二文字を見つけるところから始めてみよう。
「後夜聞仏法僧鳥」。夜明けに近い時間に、仏法僧鳥の声を聞くという題の詩です。「後夜」は、ごやと読みます。
一行に七字、それが四行。
二行目の終わりと、三行目の始まりに「一鳥」が続くんです。一羽の鳥、という意味だね。ここを目印にすると、詩の中の動きを追いやすくなります。
「一鳥」が、次の句へつないでいる
原文は、明治大学の加藤徹氏の漢詩講義資料と、広島大学公開の佐藤利行氏「日本漢詩研究概論」で確認できます。後者では『性霊集』巻十の詩として紹介されています。『性霊集』は、空海の詩や文章を集めた書物です。
二句目と三句目の原文を並べると、こうなります。
三宝之声聞一鳥
一鳥有声人有心
一行の終わりにいる鳥が、次の行の始まりへ。
あ、同じ鳥の話が続いているんだね、とつかめるところです。
二句目の「三宝」は、仏・法・僧。仏教で大切にする仏、教え、僧の三つを指します。鳥の声と仏教の言葉が重なる詩として読む手掛かりになります。
鳥の種類の詳しい同定は、ここでは扱いません。まずは原文の「一鳥」がどうつながるかを見ていこう。
鳥の「声」と、人の「心」が並ぶ
三句目には「有声」と「有心」が並んでいます。
鳥には声があり、人には心がある。並びを見つけると、鳥だけに向いていた目が、人へ移るのを追えるね。
さらに四句目は「声心雲水倶了了」。
声、心、雲、水という文字が並びます。「了了」は、はっきりしていること。読みは「りょうりょう」です。
ここから先は、原文の言葉の配置に注目した読み方の提案です。
一羽の声を聞く場面から、人の心、そして周りの雲や水へと、見る範囲が広がっていくように読んでみる。すると、短い四行でも場面が動くんです。
すべての意味を一度に説明しようとしなくて大丈夫。まず「鳥→声と心→雲や水」と、登場する言葉をたどってみよう。
訳と一緒に読みたいなら、収録作品を確認して選ぼう
原文を見ながら、書き下し文と現代語訳も並べたい人には、加藤精一訳『空海「性霊集」抄 ビギナーズ 日本の思想』が候補になります。書き下し文とは、漢文を日本語の語順などに合わせて読める形にしたものです。
KADOKAWAの商品案内では、三十篇を選び、書き下し文、口語訳、解説を付けた本と説明されています。収録例には「後夜に仏法僧鳥を聞く」もあります。
ISBN9784044094928で楽天の紙の本と照合しました。ISBNは、本の版などを確認するための番号です。今回、この本の訳文そのものは読んでいません。
詩に戻るときは、二句目の最後の「一鳥」に指を置いて、次の行の「一鳥」へ進んでみてね。
漢字を一つずつ解くのが大変な日でも、繰り返す言葉なら見つけられる。
その小さな入り口から、四行の先まで読んでみよう。